熊笹

入浴剤に使う分を干して、葉のままでその日だけフレッシュなのに入ってみたのだった。

熊笹は私にってふるさとの匂いだ。
おばあちゃんの思い出なのだ。

お湯で温まってあの独特のすっとする清らな香りが立ち上がってきたとき、私はいいものに包まれているような感じに体ごと溶けていった。

いいこと、懐かしいこと、私を作ってきたすばらしいことの全てが私を包み込んだ。
光のように、ひなたのように、懐かしい家の床の乾いたいい感触のように。

そしてすっかりしおれた熊笹の葉をほほにすりよせて、「ありがとう」と口に出して言った。

世界中の熊笹に対する感謝の気持ちが私を満たした。
実際にその気持ちが世界中の山に生えている熊笹をかすかにゆらして伝わっていったのではないかというくらい、その気持ちはすうっと天に通った。

それはほんとうの感謝だった。

気をつかってするものでもなく、口をありがとうと動かすだけでもなく、こみあげてくるものだった。

そしてほんとうの感謝の気持ちというものを味わうことをさせてくれたことにまで、私は感謝した。

熊笹も私も生きていて、ここにいて、会えて、お互いを好きなのだ。
誰かといっしょにいるのと同じくらい、熊笹と私はそこでよりそっていた。
命と命がその小さい風呂の中でよりそった。

『ひみつの花園』 よしもとばなな
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# by codamama | 2014-09-11 22:57


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